追究

2025年02月28日

2024年度 第3回 食創造科学科 学術講演会 「超一流シェフのおもてなしとクリスマス」

2024年12月7日(木)長久手キャンパス 811教室

名古屋観光ホテル名誉総料理長の森繁夫様をお迎えして、
これまでの歩みとおもてなしの極意をお話しいただきました。

 「食」に関する多様かつ専門的な知識の修得を目指す食創造科学科では、定期的に学外の専門家を招いて学術講演会を開催しています。2024年12月7日(木)には、食文化論などを専門とする野田雅子先生がホストとなり、名古屋観光ホテル名誉総料理長の森繁夫様をお招きして講演会を実施しました。

 森様は漁業の盛んな愛知郡下之一色町(現:名古屋市中川区)の生まれ。子どもの頃に母親が入院し、3ヶ月ほど台所を任された経験が料理人人生の原点であったと振り返ります。中高校生になると、欧米への憧れから料理の道へ進むことを決意。縁あって名古屋観光ホテルに入社します。しかし、素朴な漁師町で育った少年にとってホテルの厨房は別世界。知らないことばかりで、辛い下積み生活が始まりました。当時は非常に封建的だった料理の世界、先輩から易々と仕事を教えてもらえることはなく、先輩シェフが使った調味料の分量をこっそりメモするなどして仕事を覚えました。数少ない休みの日であっても、料理長が新しいメニューを出すとなれば休み返上で厨房へ。そんな実直な姿勢が認められ、30代でチーフに抜擢、40代で総料理長、50代で常務取締役総料理長としてホテル経営にも携わり、平成・令和にわたって国内外の賓客やロイヤルファミリー、各界VIP等のおもてなしを担当し、2020年には黄綬褒章を受章。現在は名誉総料理長となり、後進の育成にも熱心に取り組んでおられます。

 森様からは、「どんな世界でも、結果はすぐに出るわけではありません。目の前のことにコツコツと取り組み、一つずつハードルを超えていく。そうすると、いつしか周りに認めてもらえるようになり、自信が芽生え、先の風景が見えるようになります。安易に新しい分野へ行くことも否定はしませんが、隣の芝生は青く見えるもの。その前に自分自身との戦いに挑み、ときに堪えながら頑張ってみる。それこそ最も大切な挑戦ではないでしょうか」と、学生へのエールをいただきました。
 また、“一流のおもてなし”は調理だけでは完結せず、予約時のオペレーション、スタッフの身だしなみ、テーブルクロスやカトラリー、空調、照明、アート、BGMなどがトータルで365日合格点をクリアしていることだとお話されます。そして、お客様の心に一生残るような感動をもたらすことができるのが、“おもてなしの力”だと伝えていただきました。

 講演後には、名古屋観光ホテル様に準備していただいた各国の食文化を反映したクリスマスケーキの紹介がありました。会場に並んだのは、フランスの「ブッシュドノエル」、イギリスの「プティング」、イタリアの「パネトーネ」、ドイツの「シュトーレン」、日本風のいちごがのった「ショートケーキ」の5つ。野田雅子先生からそれぞれのケーキの特徴や由来について説明があり、学生たちはケーキの写真を撮るなど夢中になっていました。

 質疑応答では、学生から「将来食の道に進むために、学生のうちに準備しておいた方が良いことがありますか」といった質問があり、「20代のうちは、いろいろなことに興味をもって勉強に取り組み、アートや自然、音楽、ファッションなどに触れて感性を磨くことが大事。それがきっと将来の役に立ちます」と回答していただきました。

 これまでのご経験を惜しみなく伝えていただいた森様の言葉は、学生たちの心に刻まれたのではないでしょうか。食創造科学科では、これからも学生が学修・研究を深めるきっかけとなるような講演会を実施していきます。