追究

2025年03月21日

理学療法学専攻 学術講演会 障がい者スポーツの紹介と体験

2025年1月29日(水) 長久手キャンパス1号棟多目的ホール/体育館アリーナ

理学療法学専攻の1年⽣が「障がい者スポーツとは︖」について学び、
車いすバスケットボール(⾞いすバスケ)を実際に体験しました。

 健康医療科学部 医療貢献学科 理学療法学専攻では、小児から成人、高齢者まで、すべての世代に対応したリハビリテーション専門職として地域に貢献できる理学療法士をめざして、基礎医学から臨床医学まで幅広く学修しています。2025年1月29日(水)には専攻学生を対象とした学術講演会を開催しました。びわこリハビリテーション専門職大学 リハビリテーション学部 理学療法学科の教員であり、車いすハンドボール日本代表選手である安田孝志先生をお招きし、「障がい者スポーツとはどのような種類があるのか」「パラアスリートに対するケアはどのようにしたらいいのか」などについてのご講演の後、学生たちが体育館で車いすバスケを体験しました。

 「理学療法士や作業療法士は、患者さんと付き合う時間がドクターより長い。だからこそ、障がい者スポーツの知識を身につけ、患者さんに情報を伝えられる人になってほしい。それにより、その方のその先の人生を大きく変えることができるかもしれない」と安田先生は冒頭で熱く語りました。また今では、車いすバスケをはじめ、ラグビーやボッチャ、カーリングなど、パラスポーツが身近になりましたが、障がいの度合いや症状によって適したスポーツは異なり、その種類を熟知することが大事だとご指摘なさいました。「その上で、その方の障がいに適したスポーツの場に連れて行ってあげてほしい。そのスポーツで世界をめざすことができるかもしれない。それが人生を変えるきっかけになるかもしれないのです」と話してくださいました。

 安田先生自身は、小学6年生のときにギラン・バレー症候群を発症し、治療により症状はかなり回復したものの、左右の足首が動かない状態となってしまったそうです。もともと運動が好きで、それまでソフトボールや水泳、ゴルフ、サッカーなどさまざまなスポーツを経験してきた安田先生ですが、障がいが残ってからは運動をすることもなくなってしまったそうです。というのも、当時は今ほどパラスポーツが普及していなかったこともあり、安田先生自身もパラスポーツのことを知らず、周囲にもその存在を教えてくれる人がいなかったそうです。「もし、中学生のときに車いすバスケに出会っていたら、人生が今とは変わっていたかもしれない」と振り返ります。安田先生が車いすバスケと出会ったのは、社会人になってから、仕事で出会った方が車いすバスケのチームの代表をしていて、練習に誘ってくれたのがきっかけだったそうです。それから車いすハンドボールの選手になり、2024年9月にはエジプトで開催された国際大会で日本代表のキャプテンとして出場されました。パラスポーツに出会ったことで、ご自身の人生が大きく変わり、充実した毎日を過ごしていることが伝わってきます。「車いすハンドボールは、2028年のロサンゼルスパラリンピックで正式種目への採択に向けた動きがあります。その時は年齢的に選手としてやっていくことは無理なのですが、トレーナーやコーチとして携わることはできます」と未来に熱い眼差しを向ける安田先生。障がいのある立場としての自身のエピソードを交えた話は、学生たちの心に説得力を持って染み入ってきたことでしょう。「これから運動学、解剖学、生理学を勉強して、あなたが理学療法士として関わる人の人生を応援していける人になっていってください」とエールを送ってくださいました。

 後半は体育館に移動して、参加した学生たち全員が車いすバスケを体験しました。安田先生はまず、「体験するということが大事。車いすを早く進めるにはどうしたらいいのか、止まるにはどうしたらいいのか、もし脊髄損傷だったら、もし足が動かない人だったら、と想像しながら体験してみてください」と学びのヒントを与えてくださいました。学生たちは、車いすの特徴について説明を聞き、実際に前に進んだり、方向転換したり、後ろ向きに進んだりなど操作を練習した後に、4チームにわかれて車いすバスケの模擬試合をおこないました。はじめは車いすの操作に不慣れな様子の学生たちでしたが、すぐに慣れることができ、試合を楽しめるほどに。「両足を車いすのフットステップに乗せておかないとぶつかったりして危ない」など、実際に体験したからこそ、気が付くポイントについても身をもって学ぶことができました。

 今回の講演会での具体的なエピソードを交えた話や車いすバスケの体験により、パラスポーツについて、より具体的に学ぶことができたのではないでしょうか。安田先生の温かく、そして情熱を持った言葉の一つひとつが、きっと学生たちの心に深く刻まれたはずです。