追究

2025年09月09日

食健康科学部 食創造科学科 授業風景「食品加工学」

2025年5月7日(水) 長久手キャンパス133教室

イチビキ株式会社の方をお招きし、
「商品開発の現場」についてご講義いただきました。

 愛知淑徳大学の食創造科学科は、食品学、栄養学、食文化、調理学、健康学、食創生の6つの領域から食品開発について多角的に学び、食に関する専門的な知識を修得していきます。「食品開発」を「食の創造」と捉えて実践的に学ぶことで、健康社会に貢献できる人材の育成に取り組んでいます。
 2025年5月7日(水)、「食品加工学」の授業でゲストスピーカーとしてイチビキ株式会社の研究開発部の西村様をお招きし、商品開発についてお話しいただきました。

 はじめに西村様よりイチビキ株式会社についての説明がありました。名古屋市熱田区に本社があるイチビキ様の創業は安永元年。なんと251年も続く老舗企業です。味噌や醤油、豆加工品や米関連食品など和食中心の食品メーカーで、味噌の全国シェア率は第4位、東海エリアでは第1位であり、私たちの食卓において身近な企業となっています。
 そのあと、イチビキ様の新製品・商品開発プロセスについて『現状分析』、『商品コンセプトの開発』、『新商品の開発』の順にお話しされました。『現状分析』では新商品を開発するにあたって、まずはマーケットの状況や顧客情報を分析し、他社と比べて優位性のある要素を探し、それを商品開発やマーケティングの戦略に役立てています。『商品コンセプトの開発』ではターゲットが商品を通じてどんな変化をするか考えるものだと説明してくださいました。そして、『新商品の開発』は、製品に価値をつけることであり、より消費者に注目されるためにネーミングやパッケージ、キャッチコピーに工夫を凝らしていることを伝えました。

 新商品の開発はさらに深掘りして講義が進められ、「追随型」「ニーズ型」「シーズ型」の3つのモデルを、それぞれイチビキ様の商品の事例を交えてお話しいただきました。
 「追随型」では塩麹商品が紹介されました。イチビキ様では以前から塩麹を取り扱っていましたが、小規模での生産しか行われていませんでした。しかし、塩麹ブームの到来により、「流行に敏感な主婦」や「話題の塩麹を提供したい食品メーカー」をターゲットに商品のラインナップを見直し、これまで2億円だった麹関連商品の売上が62億までに上昇したそうです。

 また「ニーズ型」の商品開発では人気の「赤から鍋スープ」が登場。店舗で人気の味を家庭でも味わってもらおうと開発が進みましたが、店の味を再現するために多くの苦労があったと西村様は話されました。何度も試作品を作ったものの店舗からの快諾をいただくのは難しく、特に豆板醤やコチュジャン、甘味へのこだわりが強く、市販の原料では対応できないと考えたイチビキ様はなんとオリジナルの豆板醤とコチュジャンを開発。さらに甘酒から糖分を抽出し、それを加えることで辛さに負けないコクを生み出したとのこと。こうして誕生した「赤から鍋スープ」は辛さの段階を設けることでお子様でも辛いもの好きな方にも喜ばれる商品となっています。

 最後に紹介されたのが「シーズ型」の商品開発で誕生した「蔵華乳酸菌」です。創業以来、味噌、醤油、甘酒など多くの発酵食品を手掛けてきたイチビキ様では発酵菌の研究に力を入れています。古くから日本人の健康維持に役立ってきた味噌の健康パワーに着目し、イチビキ様の味噌蔵に住み着いていた「蔵つき乳酸菌」を発見。それを「蔵華乳酸菌」と名付けて商品化に乗り出しました。「蔵華乳酸菌」は免疫力向上や便秘の改善、肥満予防、肌質改善、貧血改善などさまざまな効果が立証されており、サプリメント商品「でらゲンキ」が誕生。自社製品だけでなく、多くの企業に「蔵華乳酸菌」を素材として提供することで、健康志向の高い方やスポーツアスリートまで幅広いターゲットに向けさまざまな商品が展開されています。

 今回の授業では、イチビキ様の製品が自分たちの手元に届くまでどのような研究開発が行われていたのかを知り、食品加工の奥深さを実感したことでしょう。食創造科学科では、これからも食に関する新たな関心を広げられるような学びを提供していきます。