追究
2025年09月01日
建築学部「集合住宅の事業計画の立て方」まちアーキ不動産株式会社
2025年度 展示会・講演会・発表会 建築学部(2025年4月開設)

2025年6月10日 (火)長久手キャンパス8号棟4階 プレゼンテーションルーム
不動産会社の方をお招きし、講演会を開催。
「不動産キャッシュフロー」の視点から
集合住宅の設計を考える貴重な機会になりました。
本学の建築学部では、建築・まちづくりから住居・インテリアまで幅広いスケールで人と環境の関わりを探求する教育に取り組んでいます。学内での講義にとどまらず、外部講師をお招きし、各分野の第一線で活躍されているプロフェッショナルから直接お話を伺う機会も積極的に設けています。
2025年6月10日、まちアーキ不動産株式会社の代表 藤谷幹様をお招きし、「不動産キャッシュフローから集合住宅を考える」をテーマにご講演いただきました。始めに藤谷様は、大学時代に建築学科でまちづくりについて学んだこと、新卒で入社した建築設計事務所で設計業務を担当した経験、そして地元の岐阜市にUターンしたいという思いから人生設計を見直し、不動産会社に転職した経緯について語られました。
建築設計事務所時代には、岐阜市の再開発プロジェクトに携わり、その際に地元を改めてリサーチしたところ、柳ヶ瀬商店街の賑わいに驚かされたといいます。さらに、その活性化を仕掛けているのは建築家だと知り、「建築家が仕事をつくり、街を動かしているんだ」と気づいたことで、「これこそが自分のやりたいことだ」と確信するようになったと振り返ります。こうした思いから、建築と不動産の間を追求する「創造系不動産」に入社。実際に不動産会社で働くと、不動産と建築は近しいようで大きな隔たりがあると実感したそうです。
藤谷様によると、建築プロジェクトは通常、不動産会社が土地を取得し、事業の方向性を決めたうえで、建築設計事務所に依頼するという流れで進められます。「不動産は“川上”と呼ばれることが多いですが、建築設計事務所へうまくつなげられなければ、良い設計にもなりません」と不動産会社が担う役割の重要性を強調しました。
続けて、藤谷様からは投資の種類や不動産投資の特徴について説明いただきました。新築・中古・リノベーションといった賃貸形態があり、それぞれに収益を増やしやすい仕組みがあること、さらに金融機関から融資を受けやすいことも不動産投資の強みであると紹介されました。また、欧米諸国に比べて、日本では中古住宅の流通が進んでおらず、今後ますます中古住宅の活用に注目する必要があるとの指摘もありました。
その上で、資金計画表について解説がありました。実際のキャッシュフローと税務上の収支は異なり、税務上の収支には減価償却費が含まれるため、建物の構造によって変わる耐用年数に注意が必要だということを学びました。学生たちは事前に作成した集合住宅の設計図をもとに、工事床面積を資金計画表に入力し、投資額を何年で回収できるか、利益がどの時点で出せるのかを検討しました。資金計画表には初期費用、運営費用、資金計画、賃料があり、それぞれについて説明していただきました。
実際に2人の学生の資金計画表を取り上げて分析したところ、いずれも25年目または35年目で投資額を回収できると判明しました。これを受けて藤谷様が「より早く回収するために、どのような工夫ができるか」と問いかけると、学生たちからは「共用部分の工事面積を減らす」「テナント料を高く設定する」といった意見が挙がりました。加えて、藤谷様からは「工事費が抑えられる木造に変える」ことも、初期費用の削減につながる有効な手段であると教えていただきました。最後に「不動産オーナーは常に、どうすれば早く投資を回収できるかを考えています。だからこそ、設計する立場であっても、このような視点を持っていることが重要です。オーナーに信頼され、うまくタッグを組むことができれば、非常に良い事業につながります」と、建築を学ぶ学生たちに力強いエールを送りました。
同じ建物でも、普段とは異なる「不動産投資」の視点から考える機会を得た学生たち。不動産に関する知識を学ぶことで、新たな視点を取り入れることができた今回の経験は、将来建築家として仕事をする際にも役立つことでしょう。本学では、これからも幅広い学びを提供し、学生一人ひとりの成長をサポートしていきます。