追究

2025年09月12日

食健康科学部 食創造科学科 授業風景「食品分析学実験」

2025年6月18日(水) 長久手キャンパス153教室

アントシアニンの抽出と分析を通して
食用色素の化学を学ぶ!

 2025年6月18日(水)、長久手キャンパスにて、食健康科学部 食創造科学科による「食品分析学実験」の授業がおこなわれました。食創造科学科では、食の安全、機能性、そして美味しさまでを科学的に探求することで将来の「食のエキスパート」を目指します。
 今回は実験の様子をレポートします。

 今回の実験テーマは「食用植物からのアントシアニンの抽出・精製と分析」。アントシア二ンとは、ナスやブルーベリー、りんごの皮などに含まれる、鮮やかな青や紫、赤の色を生み出す色素です。私たちが普段何気なく目にしている「色」ですが、アントシアニンは、実は機能性食品着色料としても注目される、非常に重要な成分です。食の安全を目指す観点からも、安全な天然着色料の需要は、今後ますます高まると期待されています。
 実験の目的は、単に食用植物から色素を取り出すことだけにとどまりません。抽出液から、「カラムクロマトグラフィー」という分析技術を使い、不純物を取り除き、色素を精製します。さらに、精製したアントシアニンの純度や化学構造、性質を「紫外可視吸収スペクトル法」や「高速液体クロマトグラフ/質量分析法(LC/MS)」といった最先端の分析機器を駆使して詳細に分析します。

 教授の吉田久美先生、助手の可児祥子先生の指導のもと、学生たちは有機化合物の精製方法の基礎から応用、さらには最新の分析技術の原理と実際を、自らの手と目で学修しました。座学で学んだ知識が、実際の実験を通して目の前で形になる様子は、まさに科学の面白さを実感できる瞬間。実験をする学生たちは、皆、集中した眼差しで手順を追っていました。吉田先生は、「今、なぜこの作業を行っているのか考えていますか?それを考えながら実験を進めましょう」と、学生たちに問いかけていました。これは単に指示通りに動くのではなく、一つひとつの工程が持つ科学的な意味や目的を深く理解することを促す、食創造科学科ならではの学びの姿勢です。この「なぜ?」を追求する問いかけが、学生たちの思考力をさらに高めていきます。
 今回の実験では、「ナス」「りんご」「ブルーベリー」などの食用植物を学生自身が持参し、4つのグループがそれぞれの植物からアントシアニンの抽出と精製を行いました。同じアントシアニンでも、植物によってその含有量や抽出のしやすさが異なるため、各グループで試行錯誤しながら作業を進める姿が見られました。

 実験を終えた学生たちからは、実践的な学びならではの率直な声が聞かれました。「ろ紙をカラムの中に上手にいれる作業などに手間取ることもあり、テキストに書かれていない作業にも慎重になるべきだと学びました。理論だけでなく、手先の技術や細かな注意も必要だと実感しました」「ナスやブルーベリーの抽出液はしっかり色が出ていましたが、りんごは色が薄く、食用植物の種類によってアントシアニンの含有量が異なることが、抽出液の色の濃さからも理解できました。」
 彼らのコメントからは、テキストや資料だけでは得られない、実際に自ら手を動かし実験するからこそ得られる「気づき」と「生きた知識」を得られたことが伝わってきます。予期せぬ実験操作上の失敗や、食用植物の種類による実験結果の違いを体感できたことは、まさに彼らが将来「食」の専門家として活躍するための糧になったと思います。

 「食品分析学実験」は、食品分析化学の理論を学修し、分析機器を用い、確かな実験手法・分析技術を身に着けることができる授業です。食創造科学科では、このように理論と実践を融合させた授業を通して、食品の化学、機能性、安全性、美味しさといった多角的な視点から、食に関する専門知識と高度な技術を身につけ、食のエキスパートとして活躍できる素養を育んでいます。