追究

2025年09月04日

建築学部 諸江ゼミ 長久手小学校の外壁カラー提案

2025年6月30日(月)長久手市立長久手小学校 図書室前の外観

建築・インテリアデザイン専攻の学生が
長久手小学校の外壁カラーを考案。
3案を教職員の方々に向けて発表しました。

 本学の建築学部 建築学科 住居・インテリアデザイン専攻の諸江ゼミでは、近現代の名建築から名もない建物まで見学・分析をしながら、新たな設計手法を模索する取り組みをおこなっています。今回は「色」をテーマに、長久手市立長久手小学校の外壁カラー提案に挑みました。

 このプロジェクトは、長久手市教育総務課のお声がけをきっかけにスタートしたもの。4期に分けて実施される大規模な外壁工事にあわせ、学生たちがカラーを考案・提案するという実践型の取り組みです。日頃、建築設計を学ぶ中で、「色」に限定して向き合う機会は初めてのことでした。学校という地域のランドマークともいえる建物に使用される色は、長く変わることのない大切な要素だからこそ、色の選定には明確な意図と強い説得力が求められます。学生たちは、限られた色数(最大3色)や、奇抜な色の使用は不可といった条件のもと、慎重に案を練り上げていきました。さらに、最終的な色は、長久手小学校の全校児童によるアンケートから決定されます。誰のための空間なのか、その視点を常に忘れず、学生たちはこれまで試行錯誤を重ねてきました。

 プレゼンテーション当日、まずは同席した株式会社阿波設計事務所の方から、プロの視点でまとめられた2つのカラー案が発表されました。図面に色が丁寧に落とし込まれ、実際の施工を見据えた提案に、学生たちは真剣に耳を傾けました。その後、諸江ゼミの学生たちが3つのグループに分かれ、それぞれのアイデアを発表。どの案も、色彩に込めた想いや学校・地域との関係性が丁寧に語られ、自信を持って教職員の前で提案しました。

Aグループ

 長久手小学校の校章にもなっている「アゲハチョウ」に着想を得て、グレー・紺色・クリーム色の3色を提案。子どもたちがのびのびと学び、自分らしく成長していく姿を、優しく落ち着いた色彩に重ねました。「校章に込められた想いを外壁に引き継ぎたい」という願いが込められた発表でした。

Bグループ

 長久手市の木である「カエデ」の葉に注目し、赤みを帯びたオレンジ、ピンクがかったライトオレンジ、オレンジがかったクリーム色を使い、紅葉のグラデーションのような自然のうつろいを表現しました。校舎全体がまちの風景の一部として自然に溶け込み、地域とのつながりやあたたかみを感じられるようにと提案。子どもたちにとって親しみやすい外観を目指しました。

Cグループ

 長久手市を象徴する自然のモチーフ「どんぐり」をテーマに、赤みがかったブラウン、黄土色、クリーム色をセレクト。子どもたちが日々過ごす学校に、ふるさとの記憶とぬくもりを込めた色を提案しました。成長を見守る場として、地域のアイデンティティを大切にした構成です。

 発表後は、実際の外観写真に各案を合成した資料を教職員の方にご覧いただきました。長久手小学校の宮下校長からは、「学生の皆さんの話を直接聞くことで、校舎がどんな想いを持って塗り替えられていくのか、職員一同、期待感を持つことができた」とコメントをいただきました。さらに「最も大切なのは、子どもたちが学校にワクワクしながら通えるかどうか。そのためにも、目で見てわかりやすい外観の資料を子どもたちに見せてあげられたら、もっとワクワク感が広がるはず」と学生たちの取り組みに対する感謝とエールをおくってくださいました。

 学生たちにとって、ただ「見た目」だけでなく、「意味」と「想い」を色に込める経験は、普段の学びとはまた違った難しさと面白さを伴うものになったはずです。最終的に色を決めるのは子どもたちだからこそ「どう伝えるか」という点にも強く向き合う時間となりました。発表を終えた諸江先生は、「厳しい意見もありましたが、学生にとって非常に良い経験になったと思います。」と語りました。何十年も残り続ける外壁の色。そんな責任感を抱えながら堂々と教職員を前に発表した経験は、学生たちにとって貴重な時間となったことでしょう。

 そして後日、長久手小学校の全校児童を対象に行われたアンケートの結果、Bグループが提案した「カエデの葉」をテーマにした配色案が見事採用されることとなりました。自然のうつろいや地域とのつながりを意識して選ばれた色彩は、これからの長久手小学校の象徴として、子どもたちの日常に寄り添い続けていきます。