追究
2025年12月16日
ビジネス学部 チャレンジプログラムB(高瀬金型)最終報告会

2025年7月25日(金)星が丘キャンパス 55教室
同業他社との差別化に成功している中小製造企業の特徴を調査・分析し、
最終プレゼンテーションをおこないました。
本学のビジネス学部は経済学や経営学、マーケティング、会計などについて、理論と実践の両面から学んでいます。今年度も3年生を対象に企業と連携し、現実の課題に対する企画の考案に取り組む授業「チャレンジプログラム」を展開。「ものづくり」「まちづくり」「プロモーション」「ホスピタリティ」の4ジャンルのうち、今回紹介するのは「ものづくり」です。




この授業では、金型とエンジニアリングプラスチックの成形加工という「ものづくり」に関わる株式会社高瀬金型様からの課題にチームで取り組みます。全15回の授業を通して、事例からパターンを見つける「帰納的思考」、得られた情報から仮説を立てる「仮説思考」、法則から推論を立てて結論を導き出す「演繹的思考」の3つを身に付けることを目標とし、課題に取り組みました。中間発表や企業ヒアリングを終え、取り組んだ最終課題は「中小企業が差別化を実現するには何が必要か」。2025年7月25日(金)の授業では、様々な中小企業の事例を踏まえて、高瀬金型様に対して最終のプレゼンテーションをおこないました。今回は、4チームの発表内容を紹介します。
●Aチーム


Aチームは、中小製造業が同業他社との差別化を実現するために「社長の価値観」「顧客の声を取り入れること」「将来を見据えた事業展開」の3つが重要だと発表しました。
高瀬金型では、「難しいことに挑戦する、他社が断る仕事をやるべき」という社長の価値観に基づき、自動車部品を大幅に縮小し、より難易度の高いスーパーエンプラと呼ばれる素材の成形に注力。もともとテスト用だった成形業務を、顧客の声を受けて金型から成形までの一貫生産体制に拡大しています。同様に志水製作所の事例では、紹介による新規取引も含め、顧客ニーズの反映が見られると指摘しました。さらに、高瀬金型は、自動車部品に依存しない体制を目指してDXシステムの外販を開始し、海外展開も進めています。これを「将来を見据えた事業展開」と位置づけ、愛知ドビーの事例とあわせて紹介。これらを踏まえて、3要素の重要性を強調しました。
●Bチーム


Bチームは、中小企業が同業他社との差別化を実現するために「DX化」「独自の技術」「人材育成」が必要だと結論付けました。その理由として、高瀬金型がDX推進後に売上が伸びていること、海外進出し独自の一貫体制を確立していること、新卒採用や海外実習生の受け入れを通じて若手人材の育成に注力していることを挙げました。さらにこれらの要素を取り入れ、差別化に成功している企業として、由紀精密、アステム、アルファーテックの事例を紹介。3要素の他に高瀬金型の事例から「社長の価値観」が企業の方向性を強く支えていることにも着目し、差別化をより強固にする要因として位置付けました。
●Cチーム


Cチームは、中小企業が同業他社との差別化を図るうえで必要な要素として「信頼」「ニッチ」「理念」の3つを挙げました。高瀬金型の事例をもとに、同社の一貫生産体制が品質・スピード・コストの面で競争優位をもたらしていること、さらにDXの活用により、業務効率化とブランド価値の向上につながる相乗効果を生み、顧客の信頼獲得につながっていることが紹介されました。また、スーパーエンプラ(難成形材)の成形というニッチ市場への特化や海外展開などを踏まえ、そのほかの中小企業の事例を紹介。浜野製作所の一貫生産体制、由紀精密のDX化による顧客価値の最大化、アステムによるニッチ市場への製品生産を取り上げました。それぞれの強みを活かして独自性を高めており、Cチームはこれらの事例からも「信頼」「ニッチ」「理念」が差別化において重要であると考察しました。
●Dチーム


Dチームは、中小企業が同業他社との差別化を実現するためには「他社がやらないニッチ市場に特化」と「効率化につながる技術力の応用」が鍵であると発表しました。「元気なモノ作り中小企業300社(2010年)」を参考に22社を取り上げ、「ニッチ市場」「取引先」「資金力」などの観点から独自に採点をおこない、企業の特徴を分類しました。高瀬金型では、一貫生産体制、DX活用の組み合わせによって、生産効率が向上。さらに、多様な取引先を持つことでリスク分散を実現し、安定した売上により金融機関からの信頼も獲得し、借入のしやすさにもつながっています。また、竹内真空被膜や高橋型精といった企業の事例も紹介し、これらの成功要因からも「ニッチ市場」と「技術応用」が中小企業の差別化において非常に有効であると改めて強調しました。


各チームが発表を終えるごとに、高瀬金型の髙瀬様から講評いただきました。今後のより良いプレゼンテーションのためには、現状の分析だけでなく、今後の戦略や、成功する企業と失敗する企業の違いにも踏み込む必要があると指摘されました。また、一貫体制を確立するまでに企業がどのような挑戦をしてきたのか、そして一貫体制を築いた結果、これまでの顧客が競合になるといったリスクについても話されました。
最後に髙瀬様は「2024年の9月から皆さんと一緒に授業をおこない、とても刺激になりました。今の職場に入って驚いたことは『営業しなくても仕事を依頼される』ということです。それは、お客様からの信頼があるからこそだと思います。そして、この『信頼』は会社の一番の資産であり、今後も大切にしないといけないと感じています。皆さんが授業で身につけた、ものづくりに対する幅広い視野や学びを今後どこかで生かしてもらえたらうれしいです」と締めくくられました。












