追究
2025年10月15日
創造表現学部 メディアプロデュース専攻 「ヴィジュアルメディア」特別ゲスト回

2025年7月30日(水)長久手キャンパス7号棟 7B1教室
学生の疑問にホンネで答える「ヴィジュアルメディア」特別ゲスト回が開かれ、
デザイナーとしてのキャリアの築き方を知る機会となりました。
2025年7月30日(水)本学の創造表現学部 メディアプロデュース専攻の「ヴィジュアルメディア」の授業では、「デザイナーになりたいなら東京に出ないとダメですか?」と題した特別ゲストによる講義がおこなわれました。
この企画は、「私はデザイナーになりたくて愛知淑徳大学に進学しました。けれど就職先は、やっぱり東京で探さないと圧倒的に不利ですか?」という学生からの実際の質問をきっかけに、授業担当の阿部先生が構想を練り、実現した企画です。
ゲストスピーカーには、東海地方のデザイン業界団体有識者の立場として的場仁利様をお招きし、東海地方のビジュアルデザイン業界の構造についてお話いただきました。さらに、東海地方に在住して活躍する山岸美紗様、加納佑輔様、栁瀬可奈子様の3名のデザイナーには、業務形態や受注構造、仕事に対する思いなどを語っていただきました。
最初に登壇した的場様は、名古屋市における、デザイナーを含む芸術家の活動の現状について言及しました。20代から60代までの幅広い世代の男女が芸術活動を行っている一方で、約半数の芸術家が兼業を余儀なくされており、芸術による年収が100万円以下という厳しい経済状況に直面していることが、データから明らかになっていると指摘しました。
現状の課題として、名古屋での仕事の少なさや、市民の文化芸術への関心度の低さを挙げ、デザイナーの数やスポンサー数の地域格差を見ても、東京と比べて名古屋は圧倒的に仕事が少ないという実態があることも述べられました。しかしそのような状況下でも、名古屋でデザイナーとして働いていくためのキャリアパスは存在するとし、的場様は4つの事例を提示しました。1つ目は「東海地方の大手一般企業で、勤務デザイナーとして活動する」こと。残る3つの事例については、後に登壇する山岸様、加納様、栁瀬様から語っていただくとして、バトンを渡しました。
2番目に登壇した山岸美紗様は、「東海地方に住み、地域の催しや文化事業などに参画し、地域で地位を築く」キャリアパス事例について紹介しました。豊田市を拠点に、モーショングラフィックとグラフィックデザインを手がける個人事務所を構えて活躍されている山岸様は、取引先がすべて愛知県内にあるといいます。そのような形が成り立った背景について、「営業は苦手でも、制作を通して他社との接点を増やすことに注力した」と語られました。
数ある活動の中でも、「コンペへの応募」によって新たな仕事を獲得することは重要だと話されました。また、まちづくりに関わるデザインを手がけた地域の行事やイベントなどに足を運ぶ中で、人とのつながりが生まれ、次の新しい仕事へと発展していった事例も紹介。ローカルならではの仕事の取り方や、その魅力について学生たちに伝えられました。
3番目に登壇した加納佑輔様は、「東海地方に住み、東京・大阪等の仕事をする」キャリアパス事例について紹介しました。瀬戸市を拠点にリモートワークをベースとし、神奈川県のブランディング企業で意匠部部長を務める加納様は、就職氷河期の中で最初に勤めた日進市の会社でインハウスデザイナーとして働いた経験を振り返りました。その経験を武器に、2007年には東京のベンチャー企業の社長とともにデザイン事業を立ち上げ、現在の働き方に至った経緯を説明されました。
「周囲のアドバイスを参考にしつつも、自分の信念を大切にし、うまくバランスを取りながらキャリアを選択した」と語る加納様は、自分のやりたい仕事の範囲、クライアント、働きたい地域、仕事に対して得たい報酬など、さまざまな角度から自分なりの働き方を選び取ることの重要性を学生たちに伝えられました。
4番目に登壇した栁瀬可奈子様は、「東海地方に住み、視野を広く持ち活動する」キャリアパス事例について紹介しました。静岡県東伊豆町でコミュニティデザイナーとして活動する栁瀬様は、愛知県立芸術大学で陶芸を専攻していたものの、「陶芸で自分は食べていけないかもしれない」と不安を感じ、学生時代にキャリアをデザイナーへとシフトされたそうです。
現在は東伊豆町の地域おこし協力隊として、農業・観光イベント企画・空き家活用など、地域の課題解決に取り組んでいる栁瀬様。企画や広報戦略の立案から実制作まで、幅広い領域を担うデザイナーとして活躍されています。
自身の経験をもとに、栁瀬様は「地方でデザイナーとして働くなら、受注業務だけでなく、自分発信の仕事もしたい人にはとてもおすすめ」と語る一方で、「直接デザインに関わる仕事以外もこなす、“なんでも屋”になる覚悟は必要」と述べ、地方で働くことの魅力と厳しさの両面を学生たちに伝えられました。
今回の特別講義を通して、学生たちは「デザイナーになりたいなら東京に出ないとダメですか?」という問いに対し、東海地方でも多様なキャリアの築き方を知ることができました。それぞれのゲストが語った実体験や働き方の選択肢は、学生たちにとって進路を前向きに捉えるためのヒントとなったことでしょう。創造表現学部では、今後も講演会やイベントなど、さまざまな機会を提供し、学生一人ひとりの可能性を大きく広げていきます。