追究
2025年12月24日
交流文化学部ランゲージ専攻 講演会「韓国語翻訳者として生きる―仕事の魅力と未来の可能性―」

2025年10月30日(木)
星が丘キャンパス 2号館6階講堂
映像翻訳者の道のりを振り返りながら、
仕事の魅力や翻訳時の心構え、キャリアの築き方を語っていただきました。
交流文化学部ランゲージ専攻では、2025年10月30日(木)に日韓映像翻訳家の朴澤蓉子さんをお招きし、講演会を開催しました。1985年生まれの朴澤さんは、大学在学中より韓日映像翻訳に携わり、2010年からフリーランスとして映画、ドラマ、ドキュメンタリーなどの字幕翻訳や吹き替えを手掛けています。講演会では、「私はこうして翻訳者になった」「翻訳という仕事の魅力」「翻訳時に気をつけていること」「韓国語翻訳者のこれから」「外国語を使って自分らしく働く」について、語っていただきました。


英語と映画が好きで、字幕を付ける翻訳者に憧れていた朴澤さんが、韓国語に興味を持ったのは中学生のとき。所属するジュニアオーケストラに朝鮮学校へ通う先輩がいたことがきっかけです。簡単な韓国語を教わるうちに「近い国なのに私は何も知らない」と気づき、韓国語や日韓関係の勉強ができる東京外国語大学に進学しました。
時を同じくして、韓国ドラマ「冬のソナタ」や映画「猟奇的な彼女」が大ヒットし、韓流ブームが到来。朴澤さんは、3年次から字幕翻訳のアルバイトをはじめました。就職活動で一般企業を受けてみたものの、最終的にはアルバイトをしていた翻訳会社に就職。2年後に独立し、フリーランスの映像翻訳者として歩み始めました。
仕事の魅力は、作品を濃密に味わえること。セリフ一つひとつを深く理解するために何度も視聴すると見えてくる景色が変わり、たくさんの人や世界と出会うような感覚になると言います。どんな経験も役に立ち、言葉の魅力を再発見できるのも魅力のひとつ。朴澤さんは「死ぬ」という言葉を例に、「旅立つ」「星になる」など、たくさんある日本語表現の中から、「シーンの状況や時代背景、キャラクターの気持ちや年齢にあったものをはめ込んでいく作業が楽しい」「日本語のボキャブラリーがないと選択肢に上がってこないため、本をたくさん読むことが大事」と語ってくださいました。


翻訳時には、言葉の意味だけでなく、作り手の意図も伝わるように訳すことを意識。何を伝えたいのか、セリフにどんな役割があるのかを常に考え、映像をよく見て答えを探します。気をつけているのは、原文を尊重し、リスペクトを持って訳すこと。誰かを傷つけることがないように差別用語や不快語は避け、「地雷を踏む」「〇〇難民」「飯テロ」「女々しい」「男勝り」などの言葉も使いません。翻訳の際、自分の意識が透けて出るため、思考をアップデートすることを忘れないと言います。
終盤では、翻訳者の未来と可能性について触れられました。YouTube字幕、シナリオ、ウェブトゥーン、ゲーム、ウェブ小説など、翻訳対象が多様化しているものの、AIの台頭で単価は低下傾向。そういった現状を踏まえつつ、「意味は通じるけれど、響く言葉をつくるのはAIでは難しい」と力強く語ってくださいました。
外国語を使って自分らしく働くヒントとして、朴澤さんは「教える、接客するなどの関わり方に加え、どういう立ち位置にいる自分が好きか。その仕事の短所に耐えられるかどうかが大事」と話します。最後に、「自分をよく知り、いろいろなことにチャレンジしてみてください」と学生たちにエールを送り、講演会は幕を閉じました。


終演後、朴澤さんは映像翻訳の授業にスペシャルゲストとして登壇。本学OGでフリーアナウンサーの山口由里さんと共に、好きなことを仕事にするとはどういうことかなどを話し、学生の質問に一つひとつ答えてくださいました。


交流文化学部ランゲージ専攻では、今後も英語、中国語、韓国・朝鮮語と、文化や歴史、思想などを学ぶプログラムを通して、第一線で活躍できる人材を育成します。












