追究

2015年12月28日

平成27年度 心理学会講演会「環境問題の心理学 ―環境配慮行動への社会心理学的アプローチと資源管理のフィールド調査から―」

平成27年度 心理学会講演会「環境問題の心理学 ―環境配慮行動への社会心理学的アプローチと資源管理のフィールド調査から―」

平成27年11月30日(月) 長久手キャンパス 7号棟7B1教室

環境問題を考える時、心理学はどのように役立つのか。学生たちは講演会を通じて、その可能性に迫りました。

 11月30日(月)環境問題をテーマに研究している名古屋産業大学の坂本 剛先生をお招きし、長久手キャンパスで心理学部主催の講演会「環境問題の心理学」を開催しました。坂本先生は環境問題の対策を考えるとき、心理学がどのように活かされているのかを解説。さらに内モンゴル自治区での調査を例に挙げ、具体的な資源管理の現状を心理学の視点を織り交ぜながら紹介しました。
 前半は環境問題における心理学のさまざまな知見を紹介。たとえば社会心理学の実験を取り上げ、節電や節水などの環境配慮行動は、近隣住民や地域の人々の一般的な行動(=社会規範)が大きく影響を与えていることを示しました。その上で坂本先生は「実験の結果、環境配慮行動は"周りのみんながやっているから、自分もやろう"と思って実践することがわかりました。しかし、実験参加者にインタビューするとほとんどの人が"節約"や"環境保全"などを理由に、自らの意思で環境配慮行動を実行していると答えます。この人々の心の働きを考慮することで、より効果的な環境問題の対策を導き出すことができるはずです」と語りました。
 後半は事例を取り上げ、内モンゴルの共有の牧畜地において、1.自治組織が強権化し、政府の意思のみを尊重した結果、個人の牧畜地となったケース、2.行政との連携がうまくいかず、ルールが構築されないまま牧畜地が荒れてしまったケース、3.家畜管理に経営の視点を取り入れ、利益を村民に還元する仕組みを構築したケースを紹介。1のケースについては、心理学の先行研究から明らかになった「環境問題への対策において、多くの立場の人を取り込むことが有効である」という知見が反映されていないことを指摘し、心理学の視点を活用しながら、資源管理をすることの大切さを伝えました。学生たちはこの講演会を通じて心理学が環境問題を考えるときにも役立つことを知り、学問の可能性をあらためて実感したことでしょう。