躍動

2022年10月26日

浮世絵の立体化という斬新な発想と丁寧な作業で第8回公募展「みんなの美術展」みなーと特別賞を受賞。

vol.93

創造表現学部 創造表現学科 建築・インテリアデザイン専攻OG [2021年度卒] 浅倉 歩さん

卒業制作の作品が、第8回公募展「みんなの美術展」みなーと特別賞を受賞。
先生の一言が公募展出展へのチャレンジに。

 「みんなの美術展」を知ったのは、ゼミの担当教員だった河辺先生に「おもしろそうな公募展を見つけたから応募してみない?」と声をかけられたのがきっかけです。みんなの美術展について調べてみると、多くの方々と作品を共有できることが分かり、応募してみたいと思うようになりました。
 もともとエッシャーやキリコの騙し絵に興味があり、それについて詳しく調べていくと浮世絵にも騙し絵もあることを知りました。実際に見てみると、完全な線描画技法なのに騙し絵が成り立つ不自然な様子に魅了され、さらにこれがリアルでも成立するのか興味が湧き、歌川芳藤の「五十三次之内猫之怪」を立体化してみようと思いました。

浮世絵の立体化という斬新な発想と丁寧な作業で第8回公募展「みんなの美術展」みなーと特別賞を受賞。

■卒業プロジェクト最終審査会 一次審査

浮世絵の立体化という斬新な発想と丁寧な作業で第8回公募展「みんなの美術展」みなーと特別賞を受賞。

■卒業プロジェクト最終審査会 二次審査

立体化したからこそ判明した新たな事実。

 猫と鈴は、発泡スチロールを紙粘土で覆い、凹凸を出しました。模様は色和紙を用いて表現しています。製作を始めてみて、実際の浮世絵では描かれていない「見えない部分」をどのように表現すればいいのかが難しいと感じました。解説書には「全部で9匹の猫がいる」と指摘していますが、実際に立体化していくと化け猫の下顎を構成するのは、9匹以外の他の猫の尻尾であることが分かりました。立体化によって、様々な角度から検討できたからこそ発見できた快感でした。
 その他にもリアルな猫の造形を表現するために、実家で飼っている猫をいろいろな角度から観察し、その骨格や体勢を作品に生かしました。猫の骨の盛り上がりは、紙粘土を使って一匹ずつ丁寧に調整したのも苦労しました。猫の芯となる発泡スチロールの組み立てから和紙を貼り終るまで、約5ヶ月かけて完成させました。
 完成した作品について、各学年の優秀作品を学外で展示する優秀作品展2022では、着眼点や発想のおもしろさに加え、表現の緻密さや丁寧さを褒めていただきました。「元となる作品から感じる化け猫の気味悪さと猫の可愛らしさが表現できている」と評価いただいたときはとても嬉しかったです。
 「みなーと特別賞」を受賞できたことについても、多くの作品がある中で賞をいただけてとても光栄です。審査員の方に「猫の表情も姿も、気迫があり、見入ってしまいます」という講評をいただき、たくさんの人に作品を楽しんでもらえた実感を覚えました。

浮世絵の立体化という斬新な発想と丁寧な作業で第8回公募展「みんなの美術展」みなーと特別賞を受賞。

浮世絵の立体化という斬新な発想と丁寧な作業で第8回公募展「みんなの美術展」みなーと特別賞を受賞。

浮世絵の立体化という斬新な発想と丁寧な作業で第8回公募展「みんなの美術展」みなーと特別賞を受賞。

浮世絵の立体化という斬新な発想と丁寧な作業で第8回公募展「みんなの美術展」みなーと特別賞を受賞。

■優秀作品展2022 展示とゲスト審査の様子

他の浮世絵の立体化にも挑戦してみたい。

 作品製作を振り返ってみると、河辺先生にたくさん相談に乗っていただいたことが印象に残っています。私が悩んでいるとすぐ解決に向けて一緒に動いてくださり、とても心強かったです。他にも多くの先生からアドバイスいただき、より充実した製作ができました。友人が「お疲れさま」と声を掛けてくれ、製作をサポートしてくれたことも嬉しかったです。一人で作品に向かっていると行き詰まってしまうこともありましたが、先生や友人のおかげで作品を完成させることができました。
 今回、初めて公募展に応募をしました。多くの方々に作品を観ていただき、評価していただけたのは、とても新鮮で良い経験になり、"じっくり見る"といろいろな発見や気づきがあるような作品をもっと作りたいと思うようになりました。他の浮世絵の立体化にも挑戦してみたいですね。現在、私は建築関係の会社で働いていますが、今回の製作で得た柔軟な発想力と着眼点で、お客様の期待以上の提案をしていけるようになりたいと思います。