躍動

2023年03月20日

日本インテリア学会 第29回 卒業作品展2022で特別賞を受賞しました。

vol.96

創造表現学部 創造表現学科 建築・インテリアデザイン専攻OG[2021年度卒]

町や人との繋がりを重視した卒業制作の作品が、
日本インテリア学会 第29回 卒業作品展で特別賞を受賞しました。

 創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻の卒業生である野中小夏さんは、卒業制作において「関係人口に、わたしがなる! マイパブリックの精神で 自分らしくマチとつながる」と題して全国各地を巡り、現地の方と交流し無償で提供してもらった資材で屋台を制作しました。この作品が評価された点は、屋台のクオリティよりも、その制作過程にあります。野中さんは夏休みなどの期間に、北海道の上士幌町、滋賀県の信楽町、愛知県の足助町、石川県の七尾町、福井県の南越前町を訪れ、「聞き屋」としてそれぞれの町で暮らす方々とのコミュニケーションを図りました。数日から数週間にわたって地域の方々と交流を深めていき、親切な方から無償で提供していただいた資材を用いて町ごとの屋台を制作していきました。本作品について、日本インテリア学会の審査員の方からは「たった一人からでもエリアと関わる独自の手法を見出せたことは秀逸」「社会へ問いかけるプレゼンテーション力が高い力作である」と、屋台のDIYを通して地域に関わろうとする姿勢が評価されました。
 今回、特別賞を受賞した野中さんに、作品や受賞した感想、大学での学びについてお話を伺いました。

 中学時代に地域学者の方が書いた本を読んだことがきっかけで、「まちづくり」に興味を持つようになりました。当初は地方創生などの地域学に関心がありましたが、建物が建つことでも人や町が変わることを知り、建築というハード面でもまちづくりができると思ったので、建築・インテリアデザイン専攻を志望しました。

日本インテリア学会 第29回 卒業作品展2022で特別賞を受賞しました。

 私は入学当初より、まちづくりのハード面は大学で学び、まちづくりの仕組みや制度などのソフト面については、さまざまな町を巡り、その地域の人々とコミュニケーションを取ることで、知見を得ようと考えていました。夏休みなどの長期休暇中には、ファームステイなどを利用して北海道などの地方に1か月ほど滞在し、牧場仕事や農業などをお手伝いしていました。大学では出会えないような方々と接することができ、その地域ならではの経験ができたことは、自分の視野を広げ、今回の卒業制作に挑戦しようと考えたきっかけにもなりました。

 "関係人口"とは、町に移住してきた人でもなく、観光目的で訪れた人でもない、地域と多様に関わる人を指す言葉です。地域外の人材でありながらも、まちづくりに必要な変化をもたらす、地域づくりの担い手として期待されています。
 これまでまちづくりには莫大なお金や時間がかかり、私にはどうすることもできないものだと考えていました。しかし関係人口であれば、ただの学生で、何者でもない私でも地域の力になることができ、さまざまな町や人と繋がれると思い、「私が関係人口になる」ことをテーマに卒業制作を進めることを決めました。

 どうすればその町の関係人口になれるかを考えたときに、思いついたのが「その町で友達をつくること」です。友達をつくることで、その人に会うために町を訪れるようになると考えました。そこで町の人と仲良くなるために、コミュニケーションと大学で学んできた建築の知識を組み合わせ、町の人から捨てる予定の資材があるかを尋ねたり、集まった素材で組み立てた屋台を引いたりすることで、会話のきっかけをつくりました。実際に話しかけてくれた方も多く、シンボルとなる建築物の存在によって人が集まってくれることを実感でき、まちづくりにおける建築の重要性を改めて理解できました。

日本インテリア学会 第29回 卒業作品展2022で特別賞を受賞しました。

■優秀作品展2022 展示とゲスト審査の様子

日本インテリア学会 第29回 卒業作品展2022で特別賞を受賞しました。

 学内の講評会では、先生から「聞き屋としての活動は評価するけれど、作品のクオリティとしては甘い点がある」と厳しいコメントをいただきました。たしかに集まった素材を組み合わせているだけの屋台もあり、いただいた資源を活かしきれていませんでした。実用性やデザイン性に注力できていなかったことは今回の反省点だと思います。

 卒業制作そのものは自分一人で取り組みましたが、その過程でとても多くの人と関わり、皆さんのご協力があったおかげで完成させることができたと思います。これまでに色々な場所を訪れ、人との繋がりをつくってきた私の集大成を制作できたので、満足のいく作品となりました。今後も町や人との繋がりを大切にし、時間があるときに「聞き屋」としての活動を続けていきたいと思います。

日本インテリア学会 第29回 卒業作品展2022で特別賞を受賞しました。

■野中さんの卒業制作
「関係人口に、わたしがなる! マイパブリックの精神で 自分らしくマチとつながる」
ぜひご覧ください。>