躍動

2024年09月17日

日本社会心理学会若手研究者奨励賞を受賞。対人コミュニケーションの研究に挑み続けたい。

vol.107

心理医療科学研究科 心理医療科学専攻 心理学専修 博士後期課程(2024年度) 志水 勇之進さん 2023年度日本社会心理学会若手研究者奨励賞 受賞

新たな興味と出会い、心理学の世界に飛び込む。

 心理学に興味を持ち、現在の自分につながる転換点となったのが、大学1年のときでした。当時、私は国際関係を学ぶため大分県の大学に進学したばかり。何気なく受講した心理学概論の授業がきっかけで社会心理学への関心が高まり、特に、相手の表情から気持ちを読み取るといった対人コミュニケーションについて深く学びたいと思うようになりました。自分がこれから進む方向性をあらためて考え、フランスの大学への語学留学を経て、アメリカに本校があるテンプル大学ジャパンキャンパス 教養学部 心理研究学科への編入を決意しました。心理学の文献は英語で書かれたものが多いため、英語で心理学を学ぼうとこの大学を選びました。
 学部時代は心理学の多様な領域を幅広く探究しました。授業はディスカッション中心だったため、コミュニケーション力も鍛えられたと感じます。専門的に学修・研究したのは「表情筋」について。編入当初から将来を見据えて大学院に進学しようと考えていた私は、学部生のうちに「顔面動作符号化システム(FACS)」を学びました。FACSは、表情筋の動きを計測し、客観的なデータとして表示・分析するためのシステムです。大学院での研究に役立てるため、国際的な資格である認定FACSコーダーも取得しました。

愛知淑徳大学大学院で送る、充実した研究の日々。

 大学院進学の準備では、まず社会心理学の分野で対人コミュニケーションについて研究している先生を全国の大学から探しました。著書を読み、この先生のもとで研究したいと感じたのが、愛知淑徳大学の小川一美先生でした。さっそく研究室訪問をして、小川先生の素晴らしい人柄にもふれ、愛知淑徳大学大学院を志望。2022年4月から心理医療科学研究科 心理医療科学専攻 心理学専修で学修・研究に専念する日々をスタートさせました。
 修士課程では「表情解読の正確さを測定するテストの作成」「表情の強度と表情解読の正確さの検討」という研究計画を立て、実験や考察を積み重ね、日本心理学会や日本社会心理学会での学会発表も経験しました。そうした研究活動の集大成となった修士論文の一部が、「Japanese Psychological Research」という国際誌に掲載されました。論文のタイトルは「表情における感情表出の強度が解読の正確さに及ぼす影響:強度が高くなっても解読の正確さは高まらない」。非言語コミュニケーションによって人と人がどう理解し合えるか、より深く検討したいと探究心が強くなりました。
 さらに、2023年度には、日本社会心理学会若手研究者奨励賞という栄えある賞をいただきました。この奨励賞はこれから後期課程でおこなう研究計画を対象としたものです。期待にしっかりと応えられるように研究に励みたいと決意を新たにしています。研究タイトルは「感情解読の正確さと解読時の視線パターンの関連の検討」。他者の表情から感情や意図を読み解く「読解力」が高い人と低い人がいますが、「その差は何だろうか?」「見ているところが違うのだろうか?」という疑問から、「視線」に着目してさまざまな実験を進めています。

人と人がより理解し合える、コミュニケーションのあり方を探究。

 心理医療科学研究科では、小川先生をはじめ熱心にご指導くださる先生方、整った研究施設・設備など、恵まれた環境のなかで学修・研究に力を注ぐことができていると実感しています。思い描いていた充実した研究生活ができ、表情筋に限らず対人コミュニケーションの研究に関する視野が大きく広がっています。大学院修了後、アカデミックポストに就くことが目標ですので、今後も研究業績を増やし、専門性を磨いていきたいと考えています。そのために2024年後期からは新たなチャレンジとして非常勤講師を務め、研究だけでなく教育の経験も積み重ねていきます。今はまだ研究者として駆け出しですが、自分が取り組んできた対人コミュニケーションに関する研究を、将来、ソーシャルスキルトレーニングに活かすなど、人と人がより理解し合えるコミュニケーションや広く社会貢献につなぐことができたらと考えています。
 心理学の魅力は、人の行動プロセスの解明、「なぜ?」を解き明かすおもしろさにあると思います。そのおもしろさを突き詰める場所が大学院であり、少しでも興味がある大学生・高校生のみなさんはぜひ進路のひとつとして検討するといいかもしれません。道はひとつではなく、いくつもの選択肢があります。自分の可能性を狭めずに、自分にとってよりよい未来を切り拓いてください。