成長

2013年03月20日

「伝わる言葉」を持った司書を、育てたい。

vol.05

文学部 図書館情報学科 OG

現場志望から、研究職へ

もともと本が好きでよく図書館を利用していたのですが、高校時代、ある図書館司書の方に影響を受け、「図書館で働く」ということを現実的に考えるようになりました。もっとも、司書の資格だけでしたら、近隣の人文系の大学でも取ることはできました。でも、どうせなら「図書館学」「図書館情報学」という体系だった学問をきちんと学んできわめたいと思い、地元・和歌山を離れて愛知淑徳大学に通うことにしたのです。当時、私の通っていた高校からは愛知淑徳大学を受験した前例がなく、自分で一から調べて、何もかも一つ一つ自分の力で進めてきました。そのため不安もありましたが、入学してみると案ずることは何もなく、楽しく充実した日々。このことが「知らない世界に飛び込んでも大丈夫なんだ」という自信になった、最初のきっかけだったのかもしれません。

入学時はもちろん、図書館で働くことを目指していました。でも、3、4年次で所属したゼミで学問の面白さと奥深さを知り、まだまだ学ぶことはたくさんある...という想いが強くなっていきました。所属したゼミは、図書館が行う情報サービスについて研究しているところ。「図書館でコンピュータをどう使わせるか」「図書館の使い方を図書館のスタッフがどのように教えるか」といったテーマに取り組んでおり、卒業論文を進めているうちに、もっと深く知りたいと思うようになったのです。そこでゼミの先生へ相談し、大学院進学と研究職への道を勧めていただきました。「自分が現場に出てもいいけれど、これから現場に出る人を育てていくのも大事な仕事だよ」という一言が、迷っている私の背中を押してくれたのです。

コミュニケーションの大切さに気づく

大学を卒業してから博士課程を終えるまでの5年間、とにかく徹底的に学んだという想いが強くあります。博士課程に入ってからは,非常勤というかたちで教える機会も持つことができ、貴重な経験がたくさんできました。研究活動に没頭する中で、本当に多くのことを学びましたが、常に心に持っていたのは、「図書館員は人付き合いが一番大事」という言葉です。図書館は、人が作り、人が使い、人を知る場所。図書館員の志望者は「本が好きだから」という人が多いのですが、実は一番必要なのはコミュニケーション能力なのです。これは大学在学中に何気なく聞いた一言なのですが、目からウロコが落ちました。もともと引っ込み思案だった自分が、いまこうして学生の前に立って教えることになったのも、コミュニケーションの大切さに気づいたからだと思いますね。

大学時代は箏曲部で琴をずっとやっていました。部長もつとめましたし、もう一つ「頭脳活動課」という知的ゲームを楽しむクラブも立ち上げたんです。当時、中学時代の友人などに会うと「変わったね~」と驚かれることばかり。それまではまったく人前に立つタイプではなかったのに、人って、変われば変わるものです(笑)。

教えることから、学ぶもの

 現在は山形県立米沢短期大学で、司書・司書教諭を育てるために教鞭を執っています。教員の立場になってみると、一人ひとりのものの捉え方はこんなにも違うのか、という当たり前のことに、いまさらながら驚かされますね。調べものの仕方や目録の作り方など、いってみれば「答えのあるもの」を理論と実践から教えているのですが、授業のレポート一つとってみても、一人ひとりの目の付け所はまったく異なっています。人間って本当に面白いな、と思う瞬間です。

学生個々の意識が高く、授業態度がいいところも嬉しいですね。例えば、授業を休んだ学生に対して「空いている時間に来てくれれば教えますよ」と言うと、きちんと研究室を訪ねてくる。学びたいという想い、勉学に対する真面目な姿勢に心を打たれます。もちろん、資格だけ取ればいいやという意識の学生も中にはいますが、たとえ少数でも熱意ある学生たちの真剣さにふれると、彼女たちに負けないだけの授業を準備しなくてはと思います。

大学は高等の教育機関で、自分から望んで入るもの。教える側の資質は当然問われるものとして、学ぶ側からもすすんで取り組めば、必ず頑張った以上の何かが返ってくる場所です。いざ入学してから「こんなはずじゃなかった」と思うのは、とてももったいないこと。自分に合った学校かどうかをしっかり見つめるとともに、自分からも求める姿勢を大切にしていただきたいと思います。