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2022年03月29日

創造表現学部 富樫ゼミ4年 JR東海(東海旅客鉄道株式会社)様のSNS研究とプロモーション提案

創造表現学部 富樫ゼミ4年 JR東海(東海旅客鉄道株式会社)様のSNS研究とプロモーション提案

2021年6月 長久手キャンパスにて

 創造表現学部メディアプロデュース専攻の富樫ゼミは、学びを通した社会実践に積極的に取り組んでいます。2021年度は、4年生のゼミ生が東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)のSNSを卒業プロジェクトで調査し、その結果を企業の担当者様にご提案しました。

Twitter『在来線の魅力【JR東海公式】』シリーズ企画立案と実践

 ひとつ目のプロジェクトでは、JR東海のTwitter『在来線の魅力【JR東海公式】』をテーマに「ユーザーから愛されるツイート」を調査・分析しました。

創造表現学部 富樫ゼミ4年 JR東海(東海旅客鉄道株式会社)様のSNS研究とプロモーション提案

(手前から)JR東海の大川さん・和氣さん・小林さんと富樫ゼミ4年生の打ち合わせ

 『在来線の魅力【JR東海公式】』(@JR_Central_2020)は、東海地域を起点とする東海道線、中央線、関西線、紀勢線といった在来線の駅や風景、そこで仕事をする乗務員の方々を紹介するTwitterアカウントです。鉄道ファンや地元のユーザーを中心に親しまれているこのアカウントを、コロナ禍で鉄道に乗る機会が全国的に減っている中で、より多くの人に知ってもらうにはどのような記事を届けていけばいいのか、JR東海のご担当者である和氣夏樹さん、大川浩和さん、小林亮祐さんにご協力をしていただき、富樫ゼミの4年生が調査・提案をしました。

 4年生たちはまず、Twitterアカウント『在来線の魅力【JR東海公式】』に投稿された全ての記事について、テキスト文、いいね数、リツイート数のデータセットを作成し、ユーザーから多くの「いいね」を獲得している投稿についてテキストマイニングをおこないました。
 その結果、「車掌・乗務・応援」や「笑顔・ありがとう」といった言葉を含む投稿に、たくさんの「いいね」がつくことが分かりました。ゼミ生たちは「人間味」を伝える投稿に、受け取る人とのエンゲージメント効果があるという仮説を立て、電車通学や通勤で馴染みのある乗務員さんの人柄や頑張りを応援したくなるシリーズのツイッター企画をJR東海のご担当者様とともに考案しました。その企画が『#10月にデビューする新人車掌』です。

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『在来線の魅力【JR東海公式】』「#10月にデビューする新人車掌」(提供:JR東海)

 この企画は、7月にJR名古屋駅近くの運輸区と呼ばれる乗務員が働くオフィスのフィールドワークを学生たちが行った際に、新入社員の方々の研修風景を取材したことから生まれました。夏から秋にかけて先輩の車掌さんと一緒に乗務員の研修をする新入社員の姿を通して、在来線への親しみや安全運行への取り組みを伝える記事のシリーズです。
 JR東海の小林さんより画像と情報をご提供いただき、ツイート文の分析からわかった「人間味」を感じさせる言葉を散りばめた記事の提案を学生たちがおこないました。最終的に企業で作成した原稿は8月から12月までの4ヶ月間、シリーズとして投稿されました。
 夏休みには学生たちもJR東海の社員さんのサポートを得て、新人車掌さんが現場で奮闘する姿を現地取材しました。

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 「#10月にデビューする新人車掌」は、投稿3回目には1,222、第4回には2,462の「いいね」を獲得する企画となりました。また、新人車掌さんたちが現場で頑張る様子の投稿には、ユーザーの方々から「応援しています。頑張って」「自分の新入社員時代を思い出します」といった温かいコメントがたくさん寄せられました。
 調査と分析、Twitter企画を行った学生たちは、このプロジェクトを通じて「自分たちのような若いTwitterユーザーは、頑張っている人の言葉や姿を紹介する記事好む傾向があると肌で感じていた。今回はデータを作った上でテキストマイニングの分析を元にして、人の心に響く投稿をJR東海さんのご協力で実践でき、結果が出せたことが本当に嬉しい」(後藤優汰・鈴木昴佑・冨松侑恭、内藤広稀)という達成感を得ました。
 また、JR東海の和氣さん、小林さん、大川さんからも「普段は乗客の皆様に人柄までを感じていただくことのできない乗務員の姿に、多くのユーザーさんの共感を寄せていただくことができ、良い企画を共に作り上げることができた」というお言葉をいただきました。

Instagram『JR東海「いいもの探訪」公式』画像の魅力分析

 もうひとつのプロジェクトは、Instagram『JR東海「いいもの探訪」公式』(iimonotanbou)をテーマとした、ユーザーが投稿された画像に抱く印象の調査です。
 「いいもの探訪」は、JR東海が運営する沿線地域の逸品や名産品のオンラインショップで、季節の果物やスイーツ、銘酒などの商品とともに、産地の風景や生産者の情報をWebサイトで伝えています。このWebサイトと連動しているInstagramの画像が、SNSユーザーにどのような印象を与えているかの分析を、JR東海様のご協力を得てゼミの4年生がおこないました。
 まずはInstagramに投稿された画像を、先行研究に基づいて、一般ユーザーが自分で撮影したような日常を感じさせる「カジュアル写真」、写真家が撮影したような構図や奥行きを感じさせる「プロフェッショナル写真」やグラフィックデザインのような規則性のある「デザイン写真」、画像に広告コピーが入っている「広告写真」に分類をしました。

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学生たちが行ったJR東海『いいもの探訪』ご担当者様への取材の様子

 分類したカテゴリーごとに「いいね」数やシェアされた数などのデータを作成し、SNSでのエンゲージメント率がどのような画像で高い傾向があるかを確認した上で、JR東海「いいもの探訪」の担当をなさっている佐々木恵実さん、吉澤克哉さん、上野美奈さんに取材をしました。
 取材では、HPやInstagramにアップされている画像について、プロのカメラマンと編集部の方が撮影する画像の使い分けや、製品特性と画像デザインの関係性についてお話を伺い、Webサイトを運営している社員さんの沿線地域への想いや、実際に取材で出会った生産者の方を紹介していくことの大切さを確認することができました。

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【画像】Instagram『JR東海「いいもの探訪」公式』より(提供:JR東海)

 取材で伺ったお話を元に、運営の想いを表現していると感じられる画像を学生たちが選んで、メディア・エンゲージメントについてのアンケート調査を夏休みから後期にかけて行い、分析をしました。その結果、全てのカテゴリーの画像に対して、情報の受け手は「信頼感」と「共有意向」を感じることがわかりました。その他、それぞれの画像について異なる印象があることもわかりました。

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ご担当者様への分析結果報告の様子

 調査・分析の結果を、JR東海の佐々木さん、吉澤さんにご報告をしました。学生からの提案は、商品に合わせて写真の撮影方法を変えることで、その特徴をより的確に伝えることができるというものです。具体的には、一般のユーザーが日常を撮影したような「カジュアル」な雰囲気の画像は、生産地の風景や生産者を紹介する際、受け手に「いい情報や知識を得た」印象を与えること、「母の日」や「クリスマス」といったイベントに関連する商品は画像に広告コピーを入れた「広告写真」が気づきを与え「いいね」数やシェアに結びつくことなどです。
 分析を行った学生(青木愛奈・宇陀万莉菜・小川柚希・菅原永恵・萩原裕里香・馬渕亜美)は「地元企業であるJR東海様の社員の方に直接取材やご提案を行う経験を通して、名産品の紹介を通じて地域を活性化していくことが鉄道会社さんの大切な仕事であることを認識できた。自分たちの分析結果や提案を聞いてくださったことも、とても貴重な経験になりました」と卒業プロジェクトを通じて多くのことを学びました。
 また、取材や分析にご協力くださったJR東海の佐々木さん、吉澤さんからは「画像の種類に注目した分析から新たな視点を得ることができました。学生の皆さんの世代が多く使っているSNSであることもあり、ゼミのみなさんが取り組んでくださった分析結果を取り入れていけたらと思います」と嬉しいコメントをいただきました。

 富樫ゼミでは2021年に、同じく卒業プロジェクトで愛知郡東郷町のプロモーション企画立案と実践にも取り組みました(小川竜之介・坂田悠輔・野村佑衣・長谷川莉沙・濱田宝・三上かな子)。ぜひご覧ください。

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