追究
2025年03月31日
人間情報学部 鈴木ゼミ 卒業制作上映会&特別講義

2025年1月21日(火)長久手キャンパス ミニシアター
卒業制作の映像作品上映会を開催。
池谷薫監督にご講評いただきました。
人間情報学部 人間情報学科の鈴木ゼミは、映像制作の現場で生じる種々の問題解決を目指し、映像環境(映像の技術、技能、技法)と鑑賞者が抽出する情報・鑑賞体験の関係を研究しています。映像をモノではなく「できごと」と捉える卒業プロジェクト(“時間芸術” の制作と “コト” のデザインに関するアクションリサーチ)では、各自の設定したテーマに関する研究と映像作品の制作を行い、制作説明書を執筆しました。
2025年1月21日(火)、鈴木ゼミ生の卒業制作上映会が開催されました。ゲスト講師としてドキュメンタリー映画『蟻の兵隊』(2005年, 蓮ユニバース)を手掛けられた池谷 薫 監督(甲南女子大学 教授)にお越しいただき、映像の制作と教育の視点から学生7名の提出作品へコメントしていただきました。
上映会では7作品を短編集として連続上映しました。ゼミや作品に関する事前の説明は行わず、池谷監督をはじめゲスト参加の方々には、会場ではじめて作品をご覧いただきました。最初に上映されたのは、水畑さん制作・監督の “The Bicycle” 。高校生が自転車を漕ぎ、友人と合流し、学校へ向かって走り続ける劇映画です。カメラの視点を次々と切り替え、迫力と臨場感を味わえる仕上がりに。続いて上映されたのは⻘野さん制作・監督の劇映画『小さなきっかけ』。落とし物を拾い、声を掛けたことをきっかけに、のちに落とし主と拾い主が友人になる様子を描いています。2人の息の合ったギター演奏も見どころです。森永さん制作・監督のアニメーション『ザッパゲ』は、効果音を全て1人の声で構成。どこかシュールさがありながらも、起承転結をはっきりと構成した作品でした。稲波さんがイラスト・監督を担当したアニメーション作品 “AM2:22” は、音楽とキャラクターによって構成。音と連動した展開により、ミュージックビデオのような仕上がりです。平井さんが制作・監督した劇映画『私が好きだった君へ』は、付き合いたての男女の様子から始まり、次第に男性が素っ気なくなり、寂しさを感じる女性の様子を描いています。酒井さん制作・監督の『嫌いなもの』は、登場人物の顔の下半分のみが映された劇映画です。友人との些細な出来事をきっかけに自己嫌悪に陥り、自分自身と向き合い自問する主人公が描かれています。柴田さんが制作・監督した『緞帳のむこう』は、演劇部に所属する2人の大学生を扱った劇映画です。登場人物それぞれの後悔と選択をテーマとしています。
すべての作品上映を終えたあと、池谷監督からは第一声「面白い」との感想をいただきました。また「鈴木ゼミでは、いったい何を学び、こうもバラバラな作品群になったのか」とのコメントがあり、会場は笑いに包まれました。鈴⽊清重先⽣(⼈間情報学部 講師)からは、事前に行ったゼミ内の試写で学生自身も同様の感想を述べていたと伝えられました。
続いて、池谷監督より制作者へ、個々の作品に関する質問がありました。制作のきっかけ、作品中の造形物へのこだわり、制作で苦労した点、最も伝えたかったこと、卒業後も制作を続けるかといった質問に、学生が答える形で対話が進みました。制作現場のコミュニケーションの難しさ、制作現場で演出意図をどう伝えるか、映像の意味をどのように明確に伝えられるのかといった話題から、さらに具体的な構成・演出のアイデアへと話題が展開しました。作品については、「メッセージを感じられる作品だった」、「意図したメッセージはきちんと伝わっていた」、「画も綺麗だった」といったコメントをいただきました。
ゲスト参加者からも「物語の続きをさらにみたいと感じた」、「美術や演出、演技が優れている」、「作品をみるだけでなく制作の裏側に卒業に向けてのドラマがあったことが感じられた」、「作り手側のドラマにも思いを馳せながら鑑賞できた」といったご感想をいただきました。
池谷監督が冒頭に語られた「鈴木ゼミでは、どのようなことを学び、このような多様な制作となっているのか」という疑問は、さらに指導教員の鈴木先生へも投げかけられました。鈴木先生はゼミの基本的な説明をし、ゼミ活動を振り返りました。「個々の面談を通じて企画・制作を進めるとバラバラな印象の作品群となりましたが、ゼミ生と共に全体を通してみると各作品に共通するゼミのねらいが表れているように感じられて⾯⽩く、短編集という上映形式を選択しました」とのコメントがありました。池谷監督からは、「すべての作品にオリジナリティがあり、それぞれが “私” を描いているという感じがあってよい」との講評をいただきました。また池谷監督ご自身の指導ゼミの作品についてもお話しされ、同じ大学生でもこのように異なる作品を作れること、その違い、多様性がみえたこともよかったとのご感想をいただきました。
最後に、池谷監督より、「たとえ映像の仕事に就かなくとも、この制作経験は大きい。仕事のなかで、人をまとめること、コミュニケーションの大変さを思い出してほしい。また、制作者である皆さんは、この作品を生涯に亘り修正し続ける資格をもっている。10年、20年経って改めて作品をみたとき、笑ってしまうこともあると思うが、きっと励まされる。それが、著作物をもったということ。この制作を誇りにして、卒業してもまた、それぞれ映像を愉しんでもらいたい。」と締め括られました。
卒業制作上映会の後、池谷監督の作品『蟻の兵隊』が特別上映され、作品の内容と制作動機、制作手法に関する特別講義を行なっていただきました。鮮烈なドキュメンタリー映画の徹底解説は、参加者を圧倒しました。その後、2 ⽉には鈴⽊ゼミの⾃主的な活動として卒業制作に関する研究発表会も実施されました。2年間に亘るゼミでの研究と卒業制作を通じて、映像の研究と制作の技能を身につけるだけでなく、制作と上映を通じた社会との関わりについても考えを深めた学生たち。今回の経験は学生たちの自信となり、社会人としての新たな課題にも活かされることでしょう。
学生インタビュー
人間情報学部4年 柴田聖也さん
高校3年生まで演劇部に所属していたので、人生を振り返って演劇への想いを込めた劇映画を制作しました。脚本と監督を担当し、照明や音響を友人に依頼し、8人で作り上げました。何度も台本を書き直し、 撮影は1カ月ぐらいで行いました。クオリティの高い動画を作るために編集作業には苦労しましたが、無事完成することができました。作品へ込めた思いが鑑賞してくださった皆さんに届くとうれしいです。