躍動

2017年10月16日

焦土からの復興を伝えたい。デジタルだからこそできることを信じて。

vol.56

人間情報学部 人間情報学科 4年(2017年度)

デジタルアーカイブの力を借りて、戦争の悲惨さを発信したい。

 卒業研究として、岐阜空襲を題材にしたアーカイブを制作しました。もともと、戦争に興味を持ったのは、小学生の時。授業で戦後の写真を見て「見分けがつかないほど、すべてが破壊され尽くした焼け野原。本当に日本なのかな」と思いました。私自身、祖父母と戦争の話をしていなかったので、余計に「自分事」としてとらえることができなかったのです。それから月日が流れ、図書館司書の勉強をしたいと、愛知淑徳大学の人間情報学部に入学しました。司書課程はもちろん、学芸員課程も履修しながら、学科の授業も受ける多忙な日々でしたが、その授業の中で「デジタルアーカイブ」と出会います。「デジタルアーカイブ=美術品などを閲覧するためのもの」というイメージでしたが、今では町おこしや東日本大震災の復興支援にも役立っていることを知り、その可能性の広さに驚きました。そして、自分でもデジタルアーカイブをつくってみたいと思うようになり、菅野ゼミに所属して戦前戦後の岐阜市の様子がわかるコンテンツづくりにチャレンジしました。

年齢もバックボーンも異なる、さまざまな人との出会い。

 比較的早くテーマは決まったのですが、問題はどのように「わかりやすく、デジタルならではの特長を活かして情報を集めるか」。菅野先生にアドバイスをいただきながら、デジタルの「アニメーションを活用して、写真を動かすことができる」という点に着目し、戦後直後の岐阜市と現在の岐阜市を見比べられるアーカイブを作ることにしました。まずは、資料を集めることからスタート。さまざまな文献の出典一覧に記載されていた「岐阜空襲を記録する会」の会長にアポイントを取り、インタビューや空襲直後の写真をご提供いただきました。岐阜空襲を10歳前後で経験した会長のお話は、私にとって初めてリアリティを感じられるもので、胸に迫るものがありました。「この思いを伝えたい」と決意を新たに、昔の写真と同じアングルで、現在の街の様子の撮影へ。中日新聞社の屋上や十六銀行の屋上など、普段は入ることができない場所からも、ご厚意で撮影させていただくことができました。

焦土からの復興を伝えたい。デジタルだからこそできることを信じて。

焦土からの復興を伝えたい。デジタルだからこそできることを信じて。

人と向き合い、真摯に接する姿勢を、これからも。

 そうして完成したデジタルアーカイブを、7月3日(月)~12日(水)に、岐阜メディアコスモスで開催された「子どもたちに伝える平和のための資料展」に展示し、利用者にフィードバックをいただくことができました。この出展も、「岐阜空襲を記録する会」の会長にお声掛けいただき、実現したもの。感謝してもしきれません。そうして、人と人との繋がりのあたたかさや、さまざまな年代の方や異なる価値観を持つ人とまずはしっかりと向き合って話をしてみることの重要性をこの卒業研究を通じて学ぶことができました。卒業後は、文化財の発掘などをおこなう会社の補助員として働きます。デジタルアーカイブ制作の技術はもちろん、磨かれた「人と真摯に接する姿勢」は、社会人としても発揮できる力だと信じて、一歩一歩、成長していきます。