心理学部 心理学科 久保 南海子

久保 南海子

久保 南海子

心理学部
心理学科

心理学研究を通して人や社会を新たな視点で探究。

プロフィール

学歴
  • 1996年3月:日本女子大学人間社会学部心理学科 卒業
  • 1998年3月:日本女子大学大学院人間社会研究科心理学専攻博士課程前期 修了
  • 2001年3月:日本女子大学大学院人間社会研究科心理学専攻博士課程後期単位取得満期退学
  • 2002年3月:博士(心理学)取得
職歴
  • 1999年1月:日本学術振興会特別研究員(DC2・日本女子大学)
  • 2002年10月:京都大学霊長類研究所 研究機関研究員
  • 2005年4月:日本学術振興会特別研究員(PD・京都大学)
  • 2007年10月:京都大学こころの未来研究センター 助教
  • 2009年4月:愛知淑徳大学心理学部 (現在に至る)

高校生の頃から人間の心理や行動について学びたいと考えた久保先生。大学・大学院時代は動物の学習行動を中心とした基礎研究や認知心理学の研究などに取り組み、その経験を活かして学習障がいのある子どもたちの支援プロジェクトにも従事しました。現在は、「推し活」という学生にも馴染み深いテーマで研究し、〝人の心〟の奥深い世界に迫っています。

私の専門は心理学です。本学では、高齢者の心理や行動について研究や教育をしています。また、市民講座や学会では、ワークライフバランスやジェンダーの講演をすることもあります。そんな私が、最近もっとも熱心に研究しているのは、実は「推し活」です。

認知科学から数年前、新たに提唱された「プロジェクション」という概念があります。

プロジェクションとは、自分が作り出した意味や表象を世界に映し出して、物理世界と心理世界を重ね合わせる心の働きのことです。私は自身がオタクでもあることから、「推し」を推すこと、すなわち熱愛する対象へのさまざまな働きかけは、自分の心と外部の世界をつなぐプロジェクションそのものだ!と、ひらめきました。そこで、「推し活」を切り口にして、プロジェクションの研究を進めていくことにしたのです。

たとえば、「推し」のライブから持ち帰ってきた銀テープの切れ端(銀テ)などは、知らない人が見たらただのゴミです。けれど、熱心なファンにとっては「推し」への気持ちやライブの思い出などが映し出されたとても大切なものです。ゴミのようにも見える銀テを拾って保管するのは、そこにプロジェクションという心の働きがあるからなのです。もちろん、プロジェクションは「推し活」だけに生じるのではありません。ほかに「形見」なども、銀テと似たような例であるといえます。

私たちは、モノの世界のなかでただ受け身的に生きているのではありません。私たちは、モノの世界を自分で意味づけて生きているのです。そのようなプロジェクションは、ときに他者とも共有され、眼前の現実をも超えて世界を拡張できる、人間だけが持つ知性でもあります。たとえば、貨幣や宗教、国家などはその産物です。

さまざまなプロジェクションで彩られた世界を、あらためて眺めてみませんか?新たな発見が、あなたの世界をまたいっそう深化させてくれるにちがいありません。

主要著書

  • 女性研究者とワークライフバランスーキャリアを積むこと、家族を持つことー

    (共編著) 新曜社 2014年9月

  • ベーシック発達心理学

    (共著) 東京大学出版会 287頁ー303頁 2018年1月

  • 学術会議叢書29 人文社会科学とジェンダー

    (共著) 日本学術協力財団297頁ー309頁 2022年1月

  • 「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か

    集英社 2022年8月

(2023年1月 取材)